千曲万来余話その272「モーツァルト、ピアノ協奏曲全集をI・ヘブラーで聴く」を掲載。

2003年11月7日金曜日、札幌キタラ小ホール、イングリッド・ヘブラーによる全モーツァルト・プログラム・ピアノリサイタルを聴いた。
① ピアノソナタ第11番イ長調KVケッヘル番号331トルコ行進曲付き
② メヌエット、ニ短調KV355
③ デュポールのメヌエットによる九つの変奏曲ニ長調KV573
④ ロンド、イ短調KV511
⑤ ピアノソナタ第13番変ロ長調 KV333
もちろん、全曲暗譜演奏であった。終演後、盤友人は、いそいそと楽屋へ菓子折を届けるために足を運んだ。その時、つい彼女に、ドゥー ユー プレイ ザ ピアノ ベーゼンドルファー?と聞いてしまった。
オーウムラウトの発音が通じなかったのか、彼女は明らかに怪訝な、あるいは、不機嫌な表情を浮かべて、スタインウエイ!とだけ一言だった。あれは、してはいけない質問だったのか?と反省したものだった。
ヘブラーには、ピアノ協奏曲全集がフィリップスレーベルでリリースされている。指揮者は四人、
エドゥアルト・メルクス:F KV37、D KV40、B KV39、G KV41の四曲
アルチェオ・ガリエラ :D KV175、C KV246、d短調 KV466、C KV503、B KV595、Es KV365、F KV242、以上七曲
ヴィトルド・ロヴィツキ:B KV238、Es KV271ジュノーム、A KV414、G KV453 、F KV459、C KV467、A KV488、D KV537戴冠式、以上八曲
コリン・デイヴィス  :F KV413、C KV415、Es KV449、B KV450、D KV451、B KV456、Es KV482、c短調 KV491、以上八曲
1965年、66、67、68年に集中的に録音されている。
注意深く耳を傾けていると、指揮者によってピアノの音色が異なることに気が付く。ガリエラの時は、華麗で豊麗な鳴りがしているし、ロヴィツキの時は、いぶし銀で魅力的な音色、コリン・デイヴィスの時は、カッチリとした、いかにもスタインウエイの音色がする。多分、ピアノ製造年代の違いによるものなのであろう。 スタイウエイ・ピアニストとしての面目躍如としたLPレコード集。
彼女の演奏の特色は、外連けれん味のない、爽やかで健康的なアプローチ、実に堂々としたモーツァルトであることは、繰り返し聴いていて楽しいし、大変に貴重なものだ。幸福感一杯である。