千曲万来余話その381「楽興の時、カーゾン演奏ピアノの音色、オーディオ論その三」

システムを組み立てる時、たとえばコンセントに差し込む電源プラグのことを意識したことがおありだろうか?
 以前に指摘したこともあるけれど、そのとき注意すべきポイントを再記したい。
 プラグをよく観察すると、金具が出ているプラスチック面は、規格がプリントされていることが分かる。たとえば、電圧の数字とかが読み取れる。その時プラグの上下が決まるのでそれを元に、差し込むことが基本である。それ以外の時は、つまむ面で規格が書かれている面を上にして、ブランド名が書かれている面を下にするのが、ベスト。交流電源であってもそれが基本、どちらでも良いのではないか?と疑問を持たれる向きもあろうけれど、不思議と違いが出てくるのである。それは、長きにわたる経験からによるものだから、それ以上の説明は無用というまでである。
 ピンコードなどについても、差し込むとき、方向性がある。ケーブルの表皮には、注意してよく見るとクレジットがプリントされている。それを、読み取る方向で電気が流れるように配線するのが基本である。たとえば、クレジットの始め側をプリアンプ、そして終わり側にパワーアンプが来るように繋ぐということだ。そんなことに、気を使う必要があるのか?と思われてそんなのは、神経タカリ!と笑う向きもあろうけれども、そういう気遣いの上に、オーディオの愉しみは成り立っている。電源コンセントには、ホット、コールドという呼び名があるように、ホット側から電流があり、コールド、すなわち、グランドアースがあるという理屈なのだから、それに従うのは自然だというのが、よって立つ立場である。
 LPレコードの片面を再生して、大体、二十分余りが記録されている。それが、こともあろうに再生の最初とお仕舞いで、音のコンディションに違いが出てくる。つまり、再生始めは情報が豊かなのに、内周部分ではピアノという楽器一つの音楽で、その再生音の情報はやせてしまう。これは、プレーヤーのアーム、初期型というグレードアップを図って、顕著に実感するところとなってきた。スタインウエイ、スタジオ録音でマイクロフォンが近接しているであろうものと、ホールで録音されピアノの音の他にホールトーンがよく乗っている再生音では、そこのところ、差異が微妙である。
 クリフォード・カーゾン1907.5/18ロンドン~1982.9/1ロンドン
ロンドン音楽アカデミーに学び、16歳より演奏活動を始めた英国人の偉大なピアニスト。21歳で渡独して、シュナーベルに師事している。パリでランドフスカやブーランジェにも就いていて端正な演奏スタイルを確立している。特に、録音に使用するピアノは、ベーゼンドルファーが多数で、その音色は、豊かな印象を与える。
 シューベルトの楽興の時、作品94は小品六曲から成り1823~25年にかけて作曲されている。その第三曲目、ハンガリー舞曲風で、日曜日午前八時の音楽ラジオ番組開始曲として有名で盤友人が中学生の時分から親しんでいるもの。その有名曲の一つ前、二曲目は沈潜した音楽でピアノの音響を、じっくり聞かせるものである。こういう音楽を作曲する青年、フランツ・シューベルトは只者であらず、これを演奏するカーゾンのLPを再生すると、先に記した情報、つまらない知識など採るに足らないとして一笑に付されるのが落ちというものだが、さにあらず、その上での話なの・・・