千曲盤来余話その67「鉄、一貫と綿の、一貫はどちらが重いのか?」

一貫というのは、尺貫法でいうと千匁もんめ。3.75キログラム。
鉄一貫と、綿一貫はどちらが重いのか?そりゃあ鉄一貫の方が重いに決まっているでしょう!と早合点するには、道理が、有る。
認識の仕方でいうと、鉄と綿の比較でもって、一貫という認識が欠如しているからである。
これは、一つの笑い話であって、一貫という重さの感覚が無い場合の現象である。
音楽の話題でいうと、モノーラル録音とステレオ録音の違いがある。大体、1955年頃からステレオ録音によるレコードが、発売されている。
1940年代にドイツでは、ステレオ録音がなされていたともいうことも、できる。
左スピーカーから聞こえる音と、右スピーカーから聞こえる音が異なるのである。
蓄音機の世界は、モノーラルの音楽である。
イギリスのコロンビアLPレコードの初期は、マスクメロンというレーベルでSAXナンバーのもの。この種類のステレオ録音は、興味深いものがある。オットー・クレンペラー指揮したオーケストラのものは、大半が両翼配置。第二ヴァイオリンが右のスピーカーから聞こえる。アメリカのRCAレコードのLSCナンバーには、ピエール・モントゥー指揮したオーケストラ録音は、Vn両翼配置が主流。だから、1960年頃のステレオ録音は、かなり、両翼配置のレコードが、存在した。
1970年頃のステレオ録音は、左のスピーカーから第一と第二ヴァイオリンが聞こえるステレオ録音が主流を占めることになる。
大多数のレコードは、左側にヴァイオリン、右側にコントラバスという音楽が普通である。
ここで、通常の認識、常識は、ヴァイオリンは第一と第二を並べるオーケストラが当たり前ということになったように見える。当然、コントラバスは、右手側配置となっている。
演奏を供給する側は、その方が容易である。ステレオ録音は、右スピーカーから低音という固定観念が派生したのだ。
舞台、ステージをピアノの弦の配置と考えたとき、左手に低音を配置した方が自然である。
左手側からコントラバス、チェロ、アルト、そしてヴァイオリン両翼配置、それは、作曲者のイメージなのである。ステレオ録音の醍醐味は、ヴァイオリンが左右のスピーカーで対話されてこそ、成立する話。一貫という前提条件に気づくと、同じことに気がつくという話である。