千曲盤来余話その87「チェロを生かし、第二Vnの演奏を浮き彫りにする配置」

カルロス・クライバーの指揮した1982年5月3日、ミュンヘンライブがLPレコードでリリースされた。
ベートーヴェンの交響曲第四、第七番がそれで、他に田園のライブも併録されている。
耳にも鮮やかで、チェロとアルトが主旋律を演奏するとき、チェロのf字孔の効果がみずみずしい印象を与える。
だいたい、ヴァイオリンから、アルト、チェロという展開は、チェロがステージで横向きになるという弊害を、演奏者達は意に介さない配置である。
音楽的にいうと、第一Vnとチェロは、和音ハーモニーの外声部といって、高低になる。
セカンドヴァイオリンとアルトは、内声部。音楽的には、装飾的というか刻む音楽を受け持つことが多い。
音楽を聴いているとき、第一と第二ヴァイオリンを並べるのは、演奏者の主体であって、舞台ステージ両袖に展開すると、第二Vnがアルトと束ねられて、内声部は聴きやすくなる。
ステージに向かって左手から、チェロ、アルト、ヴァイオリンと並べるとき、開放弦は、低い音から高い音へと、滑らかに並ぶ。
第一ヴァイオリンが音楽を主導する弦楽合奏で、チェロ、アルトの前に配置されていつつ、第二ヴァイオリンが裏板を響かせるとき、アンサンブルは完成する。
素人集団のオーケストラが、コントラバス舞台右手側配置に終始するのは、理解が容易である。少なくとも、聴いている客席に作曲者が混じっていると考えたとき、第二ヴァイオリンとチェロを交換して、コントラバスを左手側に配置する古典的、ドイツ式の配置は、第一ヴァイオリンと距離が最短のチェロ、コントラバスの音楽は、男性的な推進力のある両翼配置の音楽の完成である。演奏者達の意志が問われる配置といえる。