千曲盤来余話その92「エマニュエル・フォイヤマン、チェロ音楽の醍醐味」

フォイヤマン1902.11.22ウクライナ~1942.5.25ニューヨーク、11歳でウィーン・フィルと共演、ベルリン高等音楽院教授を経て、ソリストや、百万ドル・トリオとして活躍。腹膜炎で急逝している。昭和初期には、戦後NHK交響楽団で活躍した齋藤秀雄が師事している。
1937、6/29、ジェラルド・ムーアをピアニストに迎えて、シューベルトのアルペジョーネ・ソナタをEMIに録音している。
艶やかな音色は、名器ストラディバリウスとも言われている。
正確な音程を駆使して、自由自在な音量のダイナミックス、伸びやかなメロディー・ラインの息づかい、さらには名技性を遺憾なく発揮している。
シューベルトの音楽では、第一楽章、アレグロ・モデラート、快速、中位の速さで。第二楽章アダージォ、ゆるやかで。第三楽章アレグレット、やや快速で。全体として、こころよい、快速感が支配している。
中でも、第二楽章から第三楽章へと推移していくときのテンポの変換、ギア・チェインジは、圧巻である。実に、聴いていて、感動を覚える音楽になっている。
あたかも、チェロというおおがらな楽器であっても、ヴァイオリンを演奏しているかのような錯覚を与えるのである。
シューベルトの持っているペイソスをさらりと表現していて、過剰な印象を与えない。
技巧テクニックが、表現の執拗性をカヴァーして、聴いていて、ロマン派音楽の明朗感を主張させている。
大人の音楽になっている。ジェラルド・ムーアの達者なピアノは、少しも出しゃばることがなくて、チェロの音楽の妨げになっていない。大変、立派である。