千曲盤来余話その95「夭折の青年指揮者ケルテス」

輸入盤のLPレコードを大学生協で購入していたのはケルテス指揮したウィーン・フィルによるブラームスの交響曲第一番、三番、四番である。二番は、旧録音で1964年のものが既発売。72年にそれらは録音されていて、彼は、1973年4月16日テルアビブ海岸で、遊泳中、高波にさらわれてしまっていた。43歳の若さであった。
1929年8月29日ブダペスト出身。リスト音楽院でショモジ、サンタ・チェチーリア音楽院で、プレヴィターリの各氏に指揮法を学んでいる。
彼の指揮する音楽で、モーツァルトの交響曲や、オペラ、レクイエムなどは白眉である。
彼の、指揮法、なかんずくオーケストラ音楽の録音は不滅であり、モーツァルトの第25番ト短調交響曲などは、指揮者の存在を、まったく感じさせない、奇蹟の名演である。
オーボエ独奏の一節、ウィーン・フィル最良の姿が記録されている。カール・マイヤーホーファーらしい可憐で、ウィーナーオーボエの名旋律がそこにある。
指揮法というのは、タタキ、シャクイなどの振り方も、そうなのだけれども、何よりも、演奏されて生まれる音楽のための指揮法なのである。
ケルテス・イシュトヴァンの音楽は、スマート、スタイリッシュ、スポーティーで躍動感、生命力に溢れている。
ベートーヴェンの交響曲第四番、バンベルグ交響楽団の演奏なども名盤の一枚である。
活力に溢れていて、プレーヤー演奏者の邪魔にならない指揮という、理想の姿を記録している。
日本フィルハーモニー交響楽団を指揮したバルトーク、オーケストラのための協奏曲では、首席チェロ奏者に若き土田英順の英姿がうかがえる。1966年二度目の来日時のDVDでチェックできる。
ロンドン交響楽団とのドボルザーク交響曲全曲は、数少ない遺産の一つに挙げられよう。
新世界からで、フルート首席は、ジェームズ・ゴールウェイらしいのだが・・・すごい!