千曲盤来余話その97「今のままじゃ、これしかないだろう・・・?」

ピアノ協奏曲コンチェルトは、独奏楽器ピアノとオーケストラの合わせる音楽である。
ピョトール・イリイッチ・チャイコフスキー1840.5/7~1893.11/6は、
ピアノ協奏曲第一番を1875年頃に完成させている。作品番号23。
彼にとって、ベートーヴェンの第五番変ホ長調作品73皇帝を超える音楽が必要とされていた。
変ロ短調というのは、フラット変音記号が五つも付けられている。いわゆるピアノの黒鍵が全て使用されていて、奇妙な作曲であることは確かだ。
第二楽章のピアノの主題が披露される前に、フルートによって主題提示がなされる。
♭ソーレ/ラソーというはずの旋律が、♭ソーレーミソーという音型になっている演奏が多数派である。
第二楽章の主題テーマ、音楽で、フルートの音型だけは異なっているのだ。
果たして、作曲者性格の特殊性が強調されると、そのように音楽が流布されることになる。
1929年ハミルトン・ハーティー指揮、ハルレ管弦楽団
1940年ウィレム・メンゲルベルク指揮、ベルリン・フィル
1951年レオポルド・ルートヴィヒ指揮、ベルリン・フィル
1955年フリッツ・ライナー指揮、シカゴ交響楽団
1975年ホルスト・シュタイン指揮、バンベルグ交響楽団
以上のLPレコードで聴ける音楽は、フルートも、すぐ後に続くピアノと同じ主題旋律を吹奏している。
わずか、音符が一つといえども、その音楽の成立では似て非なる結果になる。
指揮者にとって、選択肢が一つではないということである。
その存在が知られていなければ、スルーされるのだろうけれど、ピアノ主題と同じ音楽が自然だろうというのは盤友人の見解である、と言えるのは愉快だ。