千曲盤来余話その99「第9番グレート、シューベルトの世界」

スピーカーに向かい、LPレコードを再生する儀式を通過して、その音楽を充分に体験する。盤友人は、現代の多数の愛好家とは違い、少数派の世界を愉しんでいると言える。
まず、レコード片面2~30分間ほどの時間、音響の世界に身を委ねる。
その時、録音された演奏を通して、作曲家の世界に遊ぶことになる。
録音状態、演奏の出来映えを味わい、そうしてその音楽の創造主の恩恵にあずかる。
コンパクト・ディスクを愉しむのとは、ひと味異なるのではないか?
スピーカーの鳴りっぷりに違いがあり、音の味わいで、アナログの世界と、ディジタルの音響とは感想に違いが生じてくる。
管弦楽演奏による交響曲は、ベートーヴェンの古典的音楽から飛躍的に完成をみていて、シューベルトのロマンティックな世界へと継続されている。
メンデルスゾーン、シューマン、ブラームス達のロマン派の花園世界が繰り広げられて、ブルックナー、マーラーの後期ロマン派の爛熟した交響曲世界へと成長する。
シューベルトの第9番グレートとあだ名された交響曲は、そのままブルックナーの長大な世界へ続く予告であり、その種子は内包されている。
現在、第9番は第8番とされていて、未完成交響曲が第7番ということになる。
指揮者ルドルフ・ケンペ1910.6.14~1976.5.12は、ロイヤル・フィルハーモニック、チューリヒ・トーンハレ、ミュンヘン・フィルなどの音楽監督を経験している。オペラの指揮経験も豊富である。彼には、ミュンヘン・フィルを指揮したグレートの名盤がある。
左側スピーカーから第一ヴァイオリン、右側スピーカーからしっかりと第二ヴァイオリンの音楽が聞こえてくる。これにより、作曲者の意趣は尊重されて、音楽の醍醐味は伝えられることになる。それは、指揮者の重要な判断に基づき、記録された世界の楽しみである。
申し分ない。