千曲盤来余話その104「ヒューズの差込方、その方向性」

ここ20年来、使用してきたパワーアンプ、テレフンケン社製V69が、二回目のトラブルを発生させた。出力管のヒーターが行ったらしい。
ヒューズが切れたために、周りは、無事であって、札幌音蔵は二日間で修理してくれた。
ところがである。オーディオルームに戻ってきたV69、スピーカーから出てきた音味は、ヴァイオリンの音が、固い音に変わっていた。ピアノの音では分からないものの、その音は、あの弦楽器特有のフンワリした感じが、失せていた。
札幌音蔵に、出力管を換えてしまったからもうあの音は聴けなくなってしまったのかなあと訴えると、それは変だな、ヒューズの差込を調べてみたら?との返事だった。
すぐ、チェックして、案の定、二本ある1アンペアのものの右側が、上下逆であった。
キャップに差し込んで、本体に装着するとき、管の見える部分に1Aの文字が見えるようにセットしなければ、逆セットになってしまっている。そうすると、ヴァイオリンの音は、キーコ、キーコの固い音味に変わってしまう。
普通の人には、その違いは、感じられないだろう。20年間の聴き慣れた耳にとって、その変化は、感じられるものである。
ホルン五重奏曲変ホ長調KV407、ホルン奏者はペーター・ダムで、ヴァイオリンは、ルドルフ・ウルリヒ。彼らは、ドレスデン・シュターツカペレのメンバー。
チェロ奏者、クレメンス・ディルナーの名前は、指揮者ケンペの評伝に出てくる名演奏家である。
ちょうど、左側スピーカーからはヴァイオリン、右側スピーカーからホルンの豊かな音楽が流れてくる。レコード片面で一曲収まり、第二楽章のアンダンテ歩くようなゆったりとしたテンポでという指定が、ピッタリである。
ヒューズの差込方、上下の逆で解決されて、盤友人はホットしている。