千曲盤来余話その108「室内楽の楽器配置問題考、弦楽トリオを始めにして」

ステレオ録音を聴くとき、左と、右のスピーカーが奏でる音楽に引きつけられる。
たとえば、ベートーヴェンの弦楽トリオ作品8や、9を聴くとき、どのような配置が理想なのかを考える。
楽器は、ヴァイオリン、アルト、チェロというものである。
ここで、二通りの配置が考えられる。一方は音域の高い方から低い方へという配置。
もう一つは、チェロを音楽の中心に据えるという発想。ヴァイオリン、チェロ、アルトというようにセッティングすることである。作曲者の発想はどちらであったのか、耳にするとよく分かる。盤友人は、左右にヴァイオリンとアルトを開いて、チェロを中心に据えたのが良いと考える。音楽的に自然だ。
そのように考えると、弦楽四重奏は、アルトの隣、右袖配置に第二ヴァイオリンが、四重奏の基本ではないのだろうか?ヴァイオリン・ダブル・ウイングという言葉があることから、そのように発想するのだ。
では、作品1のピアノ三重奏は、どのように考えたらよいのか?
ヴァイオリン、チェロ、ピアノという配置が考えられる。
この発想を生かすとしたら、ブラームスのホルントリオはヴァイオリン、ホルン、ピアノという具合になる。
シューベルトのピアノ五重奏曲、鱒は、どのように配置したら良いのか?
後列には、左側からコントラバス、チェロ、アルト、前列にヴァイオリン、ピアノという配置をイメージする。
ここでいえることは、左側にヴァイオリンと、チェロをまとめることである。
右側にアルトが聞こえると、弦楽トリオであり、ピアノがあると、ピアノ三重奏になるというように、考えられる。
このような考え方は、従来のステレオ録音多数の右スピーカーからチェロが聞こえる配置を取らないことによる。ヴァイオリンとチェロの左スピーカーから聞こえる音楽に違和感はない。