千曲盤来余話その109「ブラームスにおける二面性」

クララ・シューマンを愛したロベルトは、もちろんのこと、彼女を敬愛したであろう作曲家に、ヨハネス・ブラームスがいる。彼は、1833年5月7日ハンブルクのアパート二階で生まれている。21歳の時、クララと仲良くなっている。
彼は、作品68でハ短調の第一交響曲を発表している。1876年43歳のことである。
1837年生まれで1867年に客死している土佐藩郷士に坂本龍馬が居る。歴史的には、その頃の人生が重なっている。明治維新は1868年3月14日で五箇条の御誓文発表。
彼、ブラームスの交響曲について、慎重な作曲態度で20年ほどの歳月をかけているという指摘がされることが多い。
彼の音楽、交響曲を聴くとき、ベートーヴェンの音楽の影響が聞こえてくる。第九との似たメロディーの第四楽章もさることながら、第一楽章は、明らかに、第五番の動機、モチーフが出現していることに気がつく。それは作品番号67だ。
ブラームスの二面性とは、ベートーヴェンの影響、すなわち、古典的音楽と、シューマンの世界、ロマン的情念の世界である。
先日、ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮したウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の1952年11月30日演奏会の放送録音、キングインターナショナルがリリースしたモノーラルLPレコードを購入して、再生した。
フルトヴェングラーとウィーン・フィルハーモニーとの関係は、密接なものがあり、格別の関係である。その演奏を耳にするとき、6~70人の全ての演奏家が、指揮者の王権のもとに服していることが感じられる。それは、よくあることではない。まれの感覚である。
テンポの緩急、息をのむ緊張感、自由自在な強弱、ダイナミックスの幅である。
まさに、ロマンティツクな名演奏に仕上がっている。
フルトヴェングラーのねらいは、明らかにブラームスの音楽のロマン的側面である。
この放送録音の鮮明なモノーラル録音に、心を奪われてしまった。