千曲盤来余話その110「巨人の開始音楽と海の幕切れ」

巨人というあだ名は、ジャイアンツのことではなく、タイタンである。
ギリシヤ神話の巨人族は、タイタンといわれていて、ゼウスに破れている。
グスタフ・マーラーは、1860年7月7日、カリシュト出身で1911年5月18日、ウィーンに没している。彼の交響曲第一番巨人は1889年11月20日、ブダペストで初演されている。
この開始音楽は、意表をついたものだ。弦楽器の開始でありながら、ヴァイオリンは倍音を鳴らすフラジオレット奏法で、ピーッと鳴らす。光に満ちたような不思議な音楽シーンである。
この交響曲の第四楽章は、ホルンが活躍する。その最後のコラールで、なんと、作曲者は演奏者達にスタンド・プレイを指示しているそうだ。
曲の終末付近で、ホルン奏者達がいきなり立ち上がって吹奏する。
客席で聴いている盤友人は、その時、涙を流してしまうほど、感動ものだ。
やってくれたーっ!とこうくる。
クロード・ドビュッスィ1862~1918は、1905年10月15日パリで三つの交響的スケッチ海を初演している。
海の夜明けから、真昼までが第一曲、第二曲は、海の戯れ。風と海の対話が第三曲。
この幕切れフィナーレに、ヴァイオリンのフラジオレット奏法が出現する。
ピーッという倍音を鳴らさせる。
海の感動する終幕に、マーラーの巨人の開始音楽を響かせる寸法だ。
海、大洋が巨人タイタンに勝つということなのかなあ。