千曲盤来余話その117「弦楽四重奏、ステレオ録音の醍醐味」

室内楽カンマームズィークというものは、複数の演奏楽器による合奏アンサンブルである。たとえばピアノ三重奏は、ヴァイオリン、チェロそしてピアノによるものだ。ここで演奏者達に問題が生じる。どのように楽器配置をするかということ。
ピンカス・ズッカーマン、ジャクリーヌ・デュプレ、ダニエル・バレンボイムのレコードで、録音風景写真を眺めると、前列にVn、そしてチェロ。後ろにピアノという具合である。舞台でいうと中央にピアノがあって、前列にVnと向かって右側にチェロという配置だろう。
ステレオ録音の場合、左側が高音、向かって右側に低音という感覚で配置されていることが多い。作曲者が客席側で聴いているとしたら、どういう配置をデザインしているのであろうか?
スピーカーに向かってレコードを聴くとき、左側スピーカーに弦楽器、右側スピーカーにピアノが配置されると、とても聴きやすい。中央にピアノよりも、チェロのある方が音響からみて安定感がある。左スピーカーにVnとセンター中央にチェロ、右にピアノ。
弦楽三重奏トリオは、どのように配置すると良いのか?
中央にチェロ、左にVn、右にヴィオラ=アルト良いだろう。
この配置は、Vnの音響は表板と裏板、ステージの上下に方向性があるのに対して、アルトは表板、すなわち上方向に音が発している。チェロは正面に居て、直進性がある。
この微妙な音のニュアンスが再生されると、とても嬉しい。
さて、弦楽四重奏クァルテットの場合、どうなるのか?
自然に考えると、弦楽トリオの配置に、さらに右側に第二ヴァイオリン配置がふさわしい。
これまで、四重奏は、ヴァイオリンが第一と第二と並んでいるのが大多数なのだ。
ここで、始めに、ヴァイオリン・ダブルウイング両翼配置という言葉に気付く必要が大事である。第一と第二の楽器の対話を重視する音楽は、ステレオ録音の醍醐味なのである。