千曲盤来余話その120「クラシック音楽、一つの味わい方」

LPレコードによる鑑賞法と、CDコンパクトディスクによる味わい方は、スピーカーの鳴り方の上で、質的に、異なるものがある。
一番の特徴は、ノイズが感じられるか?感じられないかである。
大多数のリスナーは、ノイズなど無い方が良いに決まっているでしょうとこうくる。
ここで、録音する際に起きる、テープノイズに焦点をあててみる。
これに限ると、低レヴェルの場合、必要とする音響情報は、ノイズの周辺にある。だから、ノイズを消去する時、大事な質感が同時に削られることになる。
このことを無視することが、CD鑑賞の第一歩になっている。
この結果、たとえば、ギター一挺の音楽の場合、ノイズが無いということから、音量を限りなく上げることが可能なため、実物の音の印象以上の音像になっている。それでは、適切な音量に調節すると良いのではないのか、ということになるのであるのだけれど、そうすると、音の魅力が半減する。音量レヴェルの設定が、大きくなる傾向がある。
これは、致命的なウィークポイント弱点である。
LPレコードの音量のレヴェル設定は、大きすぎるとき、ノイズが気になって、下げることになる。この加減の頃合いに、面白味が、決定されるのだ。
ひるがえって考えてみるに、テープノイズは、ない方が良いのではなくて、気になるかならないかの具合設定の目安になるというわけである。
空気には、炭酸ガスもあれば、酸素もある。炭酸ガスが、ノイズに例えられるとすると、その具合加減で、適正に酸素の比率、すなわち、音楽の面白味が加わってくるというのである。
ギターは六弦が基本で、バロックリュート11弦のものなどは、倍音を響かせるための楽器構造である。弦を弾くノイズなど、生々しくて、上手に再生されると、雑音という感覚はなくて、逆に臨場感という音楽鑑賞の一助になるものである。これは面白いことだから不思議というものである。