千曲盤来余話その123「ルネッサンスからバロックとの移ろい」

今年の七月には、満月が二夜もある。七月2日と31日だ。
特に二回目の夜をブルームーンと呼ぶのだそうだ。オーディオファンにとって、ご機嫌な日が二日もあるとは、よくあることではない。太陽暦では、その仕組みが理解できないのだけれど、太陰暦との関係で、ひと月に二回有るということが理解できる。
満月の日は、スピーカーの鳴りっぷりが良いというと、気のせいじゃないの?とこうくる。そのとおり!単に気のせいに過ぎないのだろう。
楽器の鳴りが豊かに聞こえるから不思議だ。満月にグッドというのは、太陽と月の位置関係で地球の引力が最大になる現象である。二時間ほど聞き続けていると、次第にスピーカーの鳴りっぷりが耳にこころよくなる。
その日を越していくと、次の日は、前日より弱めになる。新月を過ぎると次第に鳴りが豊かになる。その現象が繰り返される。確かに、室内の湿度も影響するものであるが。
鳴りとは何か?それは、楽器の倍音の鳴り方の再生である。小説家、五味康祐は、倍音を語らぬ人にオーディオは分からぬ!と言ったとか。
ヨーロッパに、リュートという楽器がある。ギターの親戚に当たる。1600年以前の楽器は、ルネッサンスリュート、それ以降のものバロックリュートになるそうだ。弦の本数、糸倉の構造が異なる。倍音を鳴らす弦が張られているのだ。
この楽器のLPレコード、アルヒーフやアクサンレーベルのものを聴くと、その倍音成分の鳴りが豊かなことに圧倒される。
低音をバーンと鳴らす、そうすると、基音の整数倍の振動数が鳴ってくる。えもいわれぬ天上の音楽と言える。イタリア、スペイン、ドイツ、ネーデルランド、イギリスなどヨーロッパ諸国にその音楽は伝わっている。ソナタ形式、以外の舞曲に基づく音楽は、その愉悦を確実に味わわせてくれること受け合いである。