千曲盤来余話その141「バッハのシャコンヌ、モノーラル針でLPレコード聴き比べ」

バッハには、無伴奏ソナタ・パルティータ6曲というヴァイオリンの独奏曲集がある。そのBWVバッハ作品番号1004の五曲目は、シャコンヌという名曲だ。パロック時代器楽形式で変奏曲の一種。スペインに渡来した舞曲であったが、イタリア、ドイツで器楽形式として発達した。
バッハのシャコンヌは、ヴァイオリンひとつ荘重で壮麗、死者葬送の時の音楽とも言われている。
だから、ウォルフガング・シュナイダーハンの1955年1月、アルヒーフ録音は、データからして貴重、悲劇的演奏に仕上がっている。
ジョコンダ・デ・ヴィート、東芝GR盤のSP復刻レコードを聴いた。ヴィヴラートが豊かで、楽器をタップリと鳴らした演奏は、ロマンティックな印象を与える。テンポもゆったりしていて、大家の風格がある。4回ほどSP録音のカットがある。特に、気にはならない。1907・6・22マルティナ・フランカ生まれ~1994・10・14ローマ没で、パリ音楽院を15歳で卒業しているという。フルトヴェングラーとも共演していてドイツものを得意としている。彼女は、しっかりした印象を与える大家である。
ヨハンナ・マルツィ1924・10・26ティミショアラ生まれ、ルーマニア~1979・8・13チューリヒ没は、イェーネ・フバイに師事している。彼女のヴァイオリンは、名器カルロ・ベルゴンツィ。たっぷりとよく鳴る。
ミソス・レコードでEMI録音の復刻LPが出ている。価格でいうと、オリジナルは40倍ほどのもの。
この音色で、デ=ヴィートが聴けたら良かったとつくづく思う、中低音域が豊かで分厚い感じがする。
ヨゼフ・シゲティ1892・9・5ブダペスト生まれ~1973・2・19ルツェルン没、彼の演奏は、1959、1960年録音で、完成度が高い。精神性を備えていて、厳しい演奏態度がひしひしと伝わってくる。よく楽器が鳴っていて、録音も立派。フレーズの弾き分け方は、さりげなくても、きっぱりしている。緻密な表情は、ヨハン・セヴァスティアン・バッハにふさわしい。この演奏一度耳にしていなければ、その人のオーディオ人生、いしずえ無きに等しいというものである。