千曲万来余話その168「楽譜の改変問題、ベートーヴェン、チャイコフスキー、ブルックナー」

情報の発信は、NHK―FM放送による。盤友人が高校生時代、親しんでいたクラシック番組で当時、作曲家柴田南雄(しばたみなお)先生の話は知識の泉であった。
ベートーヴェンの交響曲第3番英雄の第一楽章の終結部分のトランペットの吹奏するメロディーで、大多数の演奏は、ドーミド\ソ、ドミソソ/という部分、少数派はドーミド\ソ、ドーミ下の音でソ、ソソソソソソ、という具合に木管楽器と同じ音型にするのが、オリジナルだという指摘。指揮者でいうと、ピエール・モントゥーとか、ヨーゼフ・カイルベルトらがそのように演奏させているものだ。
同じく、交響曲第5番、第一楽章の提示部でホルンが、・ソソソド、レソーという音型を吹奏するもの、再現部では、ファゴットによって同じ音型を移調させて演奏させるのがオリジナルであるものを、同じ音型、移調した上で、ホルンに吹奏させている。これもホルンにさせるのが多数派になっている。
B氏の第9交響曲の最終楽章開始、ター、タタ・タタ・タタという旋律で、トランペットがメロディーラインを吹奏する部分、実は、ワーグナーによる改変とのことである。ウィルヘルム・フルトヴェングラーが盛大に演奏している音楽は、オリジナルではないのだ。ヘルベルト・フォン・カラヤンは、そこのところ、歯が抜けたような音型でトランペットが吹奏している。こちらが、オリジナルとのことだ。
チャイコフスキーの交響曲第6番第一楽章の途中で、下降する音型、pピアノ弱音六つ付く部分でファゴットがたどり着く部分、多数派は、バスクラリネットに旋律途中で、変更している。グィド・カンテルリとか、ゲオルグ・ショルティらは、ファゴットのまま下降しているオリジナル通り。
第四楽章の冒頭、第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリン、メロディーラインが綾なしている部分で、ラドミエル・エリシュカ指揮する演奏会では、第一と第二ヴァイオリン、それぞれに旋律線を分担させていた。これも改変だ。
ブルックナーの第7交響曲第二楽章、クライマックスでシンバルをジャーン、と派手に鳴らし、トライアングルをチリチリチリ・・・とさせるのは、ノヴァーク版。ハース版はこれらの打楽器を付け加えていない。ティンパニーだけのものだ。
最近の演奏会、第9交響曲で使用されていたのは、ベンヤミン・グンナー・コールス版。
これは、第一と、第二のヴァイオリンのメロディーで、斉奏ユニゾン部分の第二Vnが割愛されていたようである。楽譜の解説がなされていなかったので、正確ではないのだけれど、そんな印象を受けた。
これは、多分、チャイコフスキーの場合と同様で、楽器配置問題により改変、手が加えられていたようである、というのが、盤友人の見立て。オリジナルを尊重する態度は、配置問題に連なるといえよう。改変する必要はない。