千曲万来余話その185「たまき、まり、ゆりえ、チャイコフスキーのピアノトリオを聴く」

偉大な芸術家の思い出とうたわれ、1882年に初演されている名曲を2015年12月22日に聴いた。江別市えぽあホールは、響きが豊かで座席数400余りの小ホール。名演奏が数多く、20年余り前の建立。
ヴァイオリン川久保賜紀、2002年チャイコフスキー国際音楽コンクール一位なし二位入賞で、チェロの遠藤真理、2003年日本音楽コンクールで第一位、ピアノ三浦友理枝、2001年マリア・カナスル国際音楽コンクールピアノ部門第一位。輝かしい経歴のピアノトリオ、エイベックス・クラシックスのアーティストたちだ。
前半の名曲のあと、ピアノのチューニングを経て後半プログラム、チャイコフスキー作曲、トリオ、イ短調作品50。1881年3月ロシアの名ピアニスト、ニコライ・ルービンシュタインの死を悼んで創作された。
ピアノの低音の打鍵から、弔いの鐘が象徴されている。足利用ペダルの操作に確かな感覚も必要だ。
今年1月亡くなったヴェラ・ゴルノスタエヴァ門下生としての三浦、思い入れがよく伝わる演奏だった。
チャイコフスキーのロシア的感情の巧みな表現に成功していて、第二楽章の主題と変奏から第三楽章での最終変奏へと緊張感の持続も聴きもので、上品に仕上がっていた。
ヴァイオリンは、現代では、スティール弦の使用が一般的なのだけれど、低音域の裏板たっぷり響かせるような音楽では、ガット羊腸弦がLPレコードの記録には耳になじんでいる。ヴィオラ=アルトや、チェロと異なる最大のポイントは、裏板の表現力である。スイッチで切り替えるような話でなくてヴァイオリン音楽の魔法マジックで、パガニーニの音楽を耳にするとよく分かる話である。ということは、ヴァイオリン奏者は、その経歴の中ですでに身につけていなければならない技術である。少年時代に天才といわれた伝説の、渡辺茂夫は、その一人であった。
百万ドルトリオと称賛されたのは、ハイフェッツ、ルービンシュタイン、前期チェリストは、エマニュエル・フォイヤマン、後期はグレゴール・ピアティゴルスキー。チェリストのフォイヤマン、ピアティゴルスキーたちの特徴はその豊かな響きにある。チェロの音響は、ホールに充満するほどでなければ、その凄みは伝わらない。楽器配置は、チェロが舞台の中央にあり、しもて下手という左側、演奏者としては客席に向かって右手側には、ヴァイオリン、客席からステージに向かって右手側に、ピアノという配置が作曲者のイメージ。一般的なステレオ録音では、左右にヴァイオリンとチェロがコントラストになっていて、奥にピアノが配置される。ピアニストが、アイコンタクトを工夫して、背中で弦楽器の音楽を聴いて鍵盤の音楽に反映すると、音楽は、作曲者の世界に迫ることになるであろう。楽器の配置問題は、音楽のボタンかけ始めの一大事だ。