千曲万来余話その203「カラヤン指揮する、フィルハーモニア管弦楽団ロッシーニ序曲集」

1960年3月、ロンドン・キングズウエイホールでカラヤンは、ロッシーニ序曲集、アルジェのイタリア女、セヴィリアの理髪師、ウィリアムテルなどを録音している。
ヴァイオリンが、左右のスピーカーで掛け合いをする彼ら最後の録音、正確には9月のヴェルディとワーグナーのバレエハイライト、ポップスコンサートが彼らの最終セッションになる。
ウォルター・レッグというプロデューサーは、ステレオ録音を好まなかったといわれている。
それらの理由の一つに、オーケストラ楽器配置の問題があると、盤友人は見当つけている。
なぜなら、当時の主流は、ヴァイオリン両翼配置にあった。ところが、ステレオ録音推進する多数派たちは、左スピーカーに第一と、第二Vnを束ねて、右スピーカーにチェロ、コントラバスを配置するのを主流とした。その対称性をもってステレオとする音楽観による。
その結果、左スピーカーで主旋律、右スピーカーでリズム打ちする低音域、中央に内声部という伴奏形を、サンドイッチするステレオ録音が、その後、ステレオレコードの多数を席巻した。
1964年7月1日、ピエール・モントゥーが逝去。同年、ピエール・ブーレーズはハーグ・フィルを指揮してヘンデル作曲水上の音楽を、ヴァイオリン両翼配置で録音している。ブーレーズ、1974年ニューヨーク・フィルハーモニックと録音した同曲の演奏は、ステレオ主流のスタイルをとっている。
左スピーカーにヴァイオリン、ホルンを配置していて現在主流のオーケストラ配置のスタンダードになっていることに気がつく。
1984年頃から開始された、ジェイムス・レヴァイン指揮するウィーン・フィルのモーツァルト・ツィクルスは、伝統型配置、ヴァイオリン両翼配置に楽器配置セッティングされて録音している。
これらは、左スピーカーに第一Vn、チェロの音楽が聞こえてくるのだ。右スピーカーには、第二Vnと、アルトという伴奏形が聞こえてくる。
演奏者たちには、第一と第二のヴァイオリンを束ねた配置の方が演奏のハードルは、低い。だから、多数の楽団から採用される20世紀の流れになったといえる。
ヴァイオリン両翼配置で演奏するハードルは、高いけれど、現代のコンサートがマンネリズムに陥っている中で、伝統型配置回帰は、新鮮である。
2016年2月の現在、両翼配置の多数派形成の流れは、自然な結果といえるのではなかろうか?