千曲万来余話その220「フランス盤INAにて、聴けるアンドレ・レヴィのチェロ演奏」

レコードの価格が2千円という発想は、昭和40年代から購入した年齢層によるものだろう。 
キングインターナショナルが最近リリースしたアンドレ・レヴィによるチェロ・ソナタ集が一枚、9千円の外税というものが、割高感をもよおすのは、固定観念によるものといえる。当時の相場と平行させる時いかがなものか?
札幌円山動物園、年間パス料金は1千円と聴いた。 新品のレコードで、アンドレ・レヴィの演奏を聴くことができる、この時代の仕合わせに感謝する。 
平林直哉氏ライナーノーツによると、沼辺信一氏の情報提供にその演奏者の経歴は詳しい。 1894年パリ出身、パリ音楽院卒業、パリ・エコール・ノルマルの教授を経て1982年に死去。 1961年5月ブラームスのソナタ、1958年6月フォーレ・ドビュッスイの曲、ライヴ録音。 ライヴ録音では、拍手も録音されていて、臨場感を味わえる。室内楽の小ホールをイメージさせる。 
フォーレの小品エレジーは、彼の音色が千変万化、万華鏡を覗くがごときで、感服至極。つづけて パピヨンは、蝶々のひらひら舞うがごとき、高度な技巧を惜しげなく披露してその宇宙空間感覚が素晴らしい仕上がりとなっている。ピアノは、ジェヌヴィエーヴ・ジョワ。 ブラームス、ソナタ第一番ホ短調作品38、ポウル・ロヨネットのピアノ、まるで、マルグリット・ロンの弾いたピアノの音色のようで、みやびな、古めかしさ、懐かしさを想わせる。 
レヴィのチェロの音色は、剛毅で、しかも優美、朗々と歌い回す低音は、憂愁をたたえていて、深い味わい。なおかつ、ブラームスは、ベートーヴェン作曲五つのソナタのその後1865年完成、という自負を感じさせる名曲。 ブラームスを評して、ブルックナーの交響曲の規模半分に相当として、過小評価する向きもある。 
指揮者ハンス・クナッパーツブッシュは、両者とも燃焼感充分に演奏している事実、心すべき。 ソナタ第一番第三楽章の、フーガ仕上げ、ドイツ音楽の形式感として興味深い。 
アンドレ・レヴィは、フランス・ルーメンなどに、バッハ無伴奏組曲を録音している。その三枚組LPレコード、1、000、000円以上という相場ともいわれている。 レコード録音に不向きなその芸風に、一入の思いを致したのであった。 実に立派なジャケット写真の一葉でもある。