千曲万来余話その241「夏の夜の夢、ケンペが指揮するメンデルスゾーンの付随音楽」

1961年1月録音、アメリカ・セラフィム盤でロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したルドルフ・ケンペのレコード、夏の夜の夢を聴いた。
ケンペ1910.6.14独ニーダーボイリッツ生まれ~1976.5.12チューリヒ逝去
録音当時の点鬼簿によると、1960年では1月24日エドヴィン・フィッシャー73歳、9月9日ユッシ・ビョルンリンク48歳、11月2日ミトロプーロス64歳、12月7日クララ・ハスキル64歳、1961年3月8日トーマス・ビーチャム81歳、3月16日ヴァーツラフ・ターリヒ77歳、・・・
特に、ルドルフ・ケンペは61年から63年、66年から75年までロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者に就任している。きっかけは、トーマス・ビーチャムの招聘により1960年共同指揮者になったことによる。バイロイト音楽祭に出演など多忙な彼に、ビーチャムはロイヤル・フィル指揮者就任のオファーを出し、イエスかノーかの返事を要求して、50歳のケンペは快諾した。その初リハーサル風景写真一葉を見ると、第一ヴァイオリンの隣にチェロは位置していることが分かる。その翌年、ビーチャム卿の遺志をついで常任指揮者に就任したというのが経緯。
シェークスピアの劇コメディー、真夏の夜の夢として知られているが、真夏という坪内逍遙の訳語ミッドサマーは、夏至を意味しているから真夏という語感とは、少しの違和感が生ずる。
今年で言うと6月21日に当たる。盤友人は高校生の時、観劇している。
6月の花嫁は、幸福をもたらすとは、イギリスでの言い伝え。それには諸説あり、経済的にいって6月に結婚すると、一年前に遡り、税金が控除されるからということを盤友人は聞いている。
ティターニアとハーミスの恋愛コメディーにフェリックス・メンデルスゾーンは、付随音楽を作曲している。序曲、夜想曲、スケルツォ、結婚行進曲という短縮した管弦楽曲にもされている。
ケンペの指揮したレコードを聴くと、左右のスピーカーから掛け合いしたヴァイオリンの音楽を耳にすることができる。
札幌でロジャー・ノリントンは、盤友人にオールクラシックミュージック、イズ、ヴァイオリン・ダブルウイング!と明言した。その伝統は、ここに記録されている。
それにしても、結婚行進曲は、管弦楽がよく鳴る。打楽器のシンバルかきならしは、邪気払いとしてうってつけであろう。この、ケンペとロイヤル・フィルの蜜月の直後、トーマス・ビーチャム卿は、3月8日、天国に召されてしまうことになる。
人の命は、長さではなくて、一つしかないという儚い事実のみ、真実なものか?生死一如・・・