千曲万来余話その244「シューベルト作曲、未完成交響曲をカンテルリ指揮で聴く」

自筆スコアには、1822年10月30日という日付があって、初演されたのは1865年12月17日といわれているからS氏の死後37年目に公開演奏されたことになる。
交響曲というのは、多数が4楽章形式、しかも、1808年作曲された運命、田園で初めて使用された楽器トロンボーンが活躍する2楽章しか完成されていないため、未完成という通称をいただいている。
ベートーヴェンの交響曲は、第5番ハ短調、第9番ニ短調というのが短調の作品で、モーツァルトは、第25番、第40番ト短調しかその作品はない。未完成の調性はロ短調というものでハイドンにも無い調性である。
ワールドレコードでステレオ1955年8月18日録音、フィルハーモニア・オーケストラオブ・ロンドンの演奏、指揮者はグィド・カンテルリ1920.4.27~1956.11.24を聴いた。この曲のベスト・ワンと思われる内容だ。 まず、弦楽合奏でチェロ、コントラバスの旋律線に凄みが伝わってくる。こういう感想、そう簡単には出会わないものだ。そういうボデイブロウが効いているために、ホルンを中心とした管楽合奏のハーモニーが一層美しく引き立っている。
音響に一切のユレがないのは、奇蹟ともいえる。 メロディーも豊かに歌われていて、ロマン派の音楽にことさらふさわしい。 36歳で飛行機事故により悲劇的な最期を遂げた天才的指揮者の業績の一枚と言える。 フィルハーモニア管弦楽団奏者の指揮者に対するリスペクト尊敬の念がひしひしと伝わってくる。
こういう音楽を聴いていると、未完成ではなく、完成した音楽のように聞こえる。 2楽章で完成した音楽、シューベルト自身この音楽を経験していなくて、作曲しただけというのも、考えてみると、不思議である。第3楽章のピアノスケッチは、残されていることにより、4楽章の交響曲完成を目指していたことは想像されるのだけれど、音楽としては、充分、鑑賞に耐えられる作品である。
トロンボーンの音楽は、ベートーヴェンの第5番で初めて交響曲で使用されている。その活躍は、未完成交響曲でも味わうことができる。 第8番未完成というレコードが多数存在するために、欠番の第7とも最近は、通用しているけれど、かなり違和感がある。それはそれとして、第9番グレートというニックネイムも、シューベルトの交響曲にはふさわしいように、思われるのだが・・・・・。