千曲万来余話その251「やるじゃないか、ロンドン交響楽団!クーベリック指揮で・・・」

1975年頃、ドイツ・グラモフォン録音で、ベートーヴェンの交響曲全集がリリースされた。 当時、このソースは、各曲、全てオーケストラが異なって演奏されたものという宣伝情報だけであった。これだけで、たいして、興味をひくことはなく、なぜ、オーケストラが一つではないのかな?などという程度のことでスルーしていたのである。
第一番ハ長調 作品21、 ロンドン交響楽団
第二番ニ長調 作品36、 アムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団
第三番変ホ長調作品55、 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
第四番変ロ長調作品60、 イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
第五番ハ短調 作品67、 ボストン交響楽団
第六番へ長調 作品68、 パリ管弦楽
第七番イ長調 作品92、 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
第八番へ長調 作品93、 クリーブランド管弦楽団
第九番ニ短調 作品125、バイエルン放送交響楽団
こういうラインナップは、ヨーロッパ大陸そしてアメリカ大陸と網羅されていて、壮観ですらある。 さらに、LPレコードを再生して気が付くことは、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団とボストン交響楽団の二つ以外は、ヴァイオリン両翼配置という構図である。 Vn両翼配置というのは、伝統型といわれるくらい、作曲者の時代のオーケストラ配置である。 それが、ステレオ録音時代の主流、多数派はヴァイオリンが左スピーカーから聞こえ、右スピーカーからは、チェロ、コントラバスという低音域が聞こえる具合になっている。
第一番ハ長調は、1800年4月2日ウィーン、作曲者自身の指揮で初演されているのだけれど、 ここでは、ロンドン交響楽団によるものになっている。当時、フィルハーモニアオーケストラ・オブ・ロンドンを指揮していたのはオットー・クレンペラーで、彼の演奏スタイルは、Vn両翼配置が多数である。1973年7月6日、チューリヒで逝去している。
R・クーベリック1914年6月29日チェコのビーホリ~1996年8月11日ルツェルン 彼の録音は、オーケストラの配置、Vn両翼配置を複数含んでいる。ということは、ステレオ録音でも多様な試みをしているともいえるのだが、路線としても、主義ではなく、両翼配置尊重でありながら、スタイルとしては、柔軟な立ち位置をキープしていたことになる。
第一番の第三楽章、第四楽章などを聴いていると、第二ヴァイオリンが右のスピーカーから聞こえてくるのは、作曲者の発想で、演奏効果として、モノーラル録音では、トスカニーニ指揮、NBC交響楽団の演奏がすべてそうであったように男性的な音楽的印象を与える。 男性的というのは、コントラバスやチェロの配置が第一ヴァイオリン側にくることによるだろう。 ロンドン交響楽団による両翼配置は、ラファエル・クーベリクが先鞭をつけているといえる。
CDでは両翼配置が、ベルナルト・ハイティンク指揮で現在リリースされている。ただし、彼らのベートーヴェン全集はそのようになっていない。なぜなのだろうかな?