千曲万来余話その253「レコードをクリーニングして、バッハVn協奏曲を聴く」

LPレコードを聴くとき、ときどき悩まされるのが特有のノイズである。 ゴミが付着していると、プツンプツンと周期的に起きる。そうでなくても、盤面が汚れていると、プチプチという微少なノイズが付きまとうときもある。
今まで、レコードクリーニングとして、バキューム吸引式による、レコード面を希釈したアルコールを浸して、それを吸い取るものがあった。ニッティグリッティ。
ディスクアンティスタットといって、アルコール液体を浸してブラシで磨く手回し方式のもあった。
このたび、ドイツドラーベ社、ヴィニールマスター、ネッシーがクリケットレコードに採用された。 本体価格は、40万円で、規格としては簡略化されたもの。いろいろな機能が装備された物は倍以上の価格という。 方式としては、ディスク・ターンテイブルを一本のアームで洗浄し、もう一本のアームで吸引するというもの。片面は2~3分ほどで終了するから、簡便な物である。 この洗浄と吸引を経過して、レコードをかけると、プチプチシュワシュワといったノイズ感は減少する。ノイズが皆無になるといっても良いくらいである。 その結果、再生のグレードは向上して、弦楽器など、楽器の胴鳴りが明瞭になるし、ピアノの楽器全体の共鳴が再生されることになる。
ローラ・ボベスコ1921.8.9~2003.8.4は、ルーマニア出身でパリのエコール・ノルマルや、パリ音楽院で学んだ、女流ヴァイオリニスト。マルセル・シャイエに師事し、ジュール・ブーシェリの薫陶を受けている。同時代にはイヴリー・ギトリスがいる。 大戦後には、ベルギーへ移住して教授活動につとめている。 1970年頃、ユジーヌ・イザーイ合奏団とバッハの協奏曲をレコーディングしている。
レコードクリーニングをかけて、再生して分かることは、コントラバス一挺、その他は二人ずつのように聞こえる編成規模の合奏である。ボベスコの楽器は、名器グァダニーニともいわれていて、輝きのある艶やかな音色、そして鳴りッぷりの良い楽器で立派な演奏を展開する。 合奏の綾成す旋律線が、明瞭で、その上、豊麗な音響である。透明感の高い演奏が記録されている。
第一番イ短調BWV1041、第二番ホ長調BWV1042、オーボエとヴァイオリンのための二重協奏曲ニ短調BWV1060などを収録。タレントレーベルの最近リリースされたLPレコード。 ちなみに、クリケット・レコードでは一枚200円で、クリーニングしてくれることになっている。ありがたい、ありがたい!一度はお試しあると、良さが分かるというものだ。