千曲万来余話その265「エイジング、オーディオの作法イロイロ」

オーディオを始めて間もない頃、ステレオを聴いていて1時間くらい経つとイイ音がするんだよね、とその道の先達と話していたことがある。オーディオは、おおまかに云って、プレーヤー、アンプ、スピーカーの三つの部分の集合体であり、時間をかけることを、エイジングと云っている。
少し大きい音量で音楽を流していると、スピーカーの振動が、心なしか滑らかになるし、アンプが熱を帯びてくると、どこかイイ音のような感じになる。プレーヤーも回し続けると、安定感が増すというものだろう。オーディオをまじめに、37年くらい関わってくると、こだわりも、鮮明になる。
① LPレコードでは楽器の数、オトカズの少ないものから聴き始める。
② 楽器の音域、低い音から始めて、高い音に広げていく。
③ 調性、たとえば最終的に聴きたい曲がハ長調だったら、ハ長調を続けて、ニ長調だったら、ニ長調の曲をエイジングに使用する。
④ 聴きたい曲の前に、ピアノの独奏曲を鳴らす。
⑤ チェロ、ヴァイオリン、ピアノ、弦楽四重奏という順番に、最終的には、歌もののレコードを回して、人の声でスピーカーを鳴らすようにする。
良い音とは何か?というとたとえば、弦楽四重奏でいうと、ヴィオラ=アルトの楽器の音色を、くっきりと際だたせるところにある。チェロとヴァイオリンは、聞き分けやすいのだけれど、第二ヴァイオリンとアルトは、聞き分けがむつかしい。そこのところに注意して、音域が、チェロのすぐ上の声部を浮きだたせることが目的である。
そんなふうに、につまって、オーディオの匠、札幌音蔵社長KT氏に話をすると、一笑に付されて、一番最初に、オーケストラを聴けばいいんだよ!という結論だった。人それぞれのやり方があるからそれでいいの、という見解で、周波数帯域の広いソースでエイジングすれば良いのだという。 あと、カートリッジをモノーラル針にするか、ステレオ針にするか、決めることが大事だということである。
ちなみに、バッハ作曲、半音階的幻想曲とフーガニ短調BWV903、マリア・ユーディナによるピアノ演奏版を聴くのが最強だ。半音階で、ピアノの旋律線メロディーラインの音域が広く、高い音から低い音まで、網羅されている。五味康祐ごみやすすけの名言、オーディオで倍音をわからないのでは、話にならない、というものがある。和音たとえば、ドミソ、ソシレ、ファラドという音響で、全体の響きの中に鳴っている倍音を、大事にするのが倍音を聴くというもので、その倍音にこだわるのが、キモであろうか?そのために、エイジングはある。
秋の夕暮れは、虫の音が風情をかもしだす、平安時代、清少納言の名言に思いをはせる。