千曲万来余話その283「ブラームス交響曲第一番、ウィーンフィルによる名演奏を聴く」を掲載。

ロマン派作曲家の一人、ヨハネス・ブラームスはロベルト・シューマンの影響を強く受けている。
ふたりとも、作曲した交響曲は四曲のみである。
ブラームスの交響曲について、その調性を考えてみると、ハ短調、ニ長調、ヘ長調、ホ短調という展開で、主音のド、レ、ファ、ミを続けると、モーツァルトのジュピターモチーフ動機にあたるといわれている。これが、単なる偶然と見るか、否かは彼の音楽を愛する深さによって決まるだろう。
彼は第一交響曲を、構想二十年の長きにわたり作曲している、その慎重な態度に、理解はなかなか容易ではない。ブルックナーは1865年、交響曲第一番の作曲に着手、1868年リンツにて自身の指揮で初演を果たしている。ブラームスの第一番は1876年11月4日、カールスルーエで初演されている。
ブラームスは、ハ短調交響曲を作品68で発表、ベートーヴェンは作品67でそれを作曲していて、その音楽は、第一楽章のリズム動機、タタタター、タタタターというもので共通している。すなわち、ブラームスのベートーヴェンに対する尊敬リスペクトの念が、そうさせているであろうという想像は、容易にできるだろうと思われるのだ。
第二楽章のお仕舞いには、ヴァイオリン独奏の音楽がそえられている。
ウィーン・フィルハーモニーの1957年頃録音に、ラファエル・クーベリク1914.6.29~1996.8.11指揮と1958年の頃ヨーゼフ・クリップス1902.4.8~1974.10.13指揮の録音がある。それぞれデッカ録音である。
ヴァイオリンの独奏は、コンサート・マスターが受け持つ。彼は、オーケストラの中心であり、そのボウイングで演奏は統一されている。上げ弓下げ弓など、そのオーケストラの要となっていて、延ばす音など、管楽器奏者たちはコンサートマスターの動きに対して細心の注意を払うなどという大事な位置に座る。
クーベリク指揮のものは、華やかで、そのヴィヴラートから、ウィリー・ボスコフスキーの演奏のように聞こえる。片や、クリップス指揮の演奏は、繊細で、ひときわ美しい音色の控え目な独奏になっている。コンサートマスターの一覧を眺めていると、1939年から59年までの在籍者には、ビッグネイムが見える。ワルター・バリリ、彼は清潔な演奏スタイルで、モーツァルトやベートーヴェンの室内楽に名録音を残していて、その音色が親しまれている。
残念ながら、録音データに明記はされていないので、断定はできかねるが、その音色を愉しむのに、ワルター・バリリという名前の想像はワクワクドキドキ感で、一杯である。