千曲万来余話その404「J・カッチュン、ブラームス第二協奏曲でフェレンチークとの一期一会」

ジュリアス・カッチュン1926.8/15ロングブランチ~1969.4/29パリ没わずか11歳でオーマンディ指揮するフィラデルフィア管弦楽団とモーツァルトを弾いてデビュー。音楽は独学、ハーヴァード大学では、哲学と英文学を修得。卒業後パリに留学し、ソロリサイタルを開き、パリのアメリカ人と評判になったという。ブラームスのピアノ作品をデッカに録音している。1960年コピーライトで、ロンドン交響楽団、ヤーノシュ・フェレンチーク指揮したブラームス、ピアノ協奏曲第二番変ロ長調作品83は、稀有な名演名録音である。
 フェレンチーク1907.1/18ブダペスト~1984.6/12ハンガリー彼は1930年からバイロイト音楽祭で、トスカニーニ、ワルターらの補助指揮者を務め、さまざまな経験を重ねた。五十歳代後半のデッカ録音、カッチュンとのブラームス演奏は、格調高く、切れ味鋭い、怜悧な音楽に仕上がっている。堂々たるオーケストラ、朗々とホルンは吹奏していて、クラリネットは、微妙に、ヴィヴラートをかけ気味でありながらこらえていて、多分ジェルワーズドゥ・ペイエ?の名演奏は、錦上華を添えている。三十歳代前半のカッチュンは、豪快にグランドピアノを鳴らしている。彼はホロヴィッツらを聴いているか知る由もないが、明らかに、そのような演奏を展開している。若者が臆せずにオーケストラと立ち向かう姿は、恰好良いものである。ただ単に音量が大きいだけなのかと言うと、さにあらず、管弦楽との微妙な掛け合いが聴きもので、第三楽章、人生の秋を思わせる余情、たっぷりとした調べ、独奏チェロはケネス・ヒース、弦楽器のフォローも、入りは聴かせる。絶妙な呼吸で、聴き手を引きずり込む力はなみなみならない、フェレンチークの卓越した力量と云える。独奏ピアノも緊張感たっぷりで、細心の注意力を払い、美しい旋律を奏でることに成功している。
 このピアノ協奏曲は四楽章形式、第二楽章がスケルツォ風の音楽になっていて、通常の三楽章形式とは、一線を画している。普通は急、緩,急という形式なのだけれど、第二楽章に工夫して、ブラームスは第三楽章に緩徐楽章を設定している。
 管楽器のロングトーンによる和音ハーモニーも印象的である。音程がピタリ決まると揺れがないハーモニーであり、安定感を与える。そこのところ、クラリネット、ファゴットの管弦楽法は、ブラームスの醍醐味でもあり、ロンドン交響楽団の名演奏は、流石である。
 ベートーヴェンは五曲、シューマンは一曲、ショパンとブラームスは二曲というふうに、ピアノ協奏曲を残している。モーツァルトは別格で二十七曲ということになっている。そういえば、プロコフィエフは五曲、ショスターコーヴィチは二曲というぐあいであった。ラヴェルは、左手のためのというものと、二曲。
 厳密にいうと、グランドピアノという鍵盤楽器は平均律で、弦楽合奏は純正調。これは、微妙に相性悪いはずでありながら、名曲が多いというのは不思議である。ドと長三度上のミの音程で、平均律は幅が広く、純正調は狭い音程関係にある。その微妙な違いに、ピアノの音と、管弦楽の音程感を聞き取るのもまた、一興である。変ロ長調でいうと、主音と第三音の関係は狭いのだろうか? そこのところは微妙であり、ベートーヴェン、ブラームスは第二協奏曲でその調性を採用しているのは単なる偶然の一致なのであろうか?
 ジュリアス・カッチュンは、四十二歳で夭折、ここに名演奏が記録されていることを、喜びたいと思う。フェレンチークとの出会いが、素晴らしいブラームス音楽の演奏史に不滅の業績として記録されていることを、このサイトで発信できるのは幸せである。