千曲万来余話その574~「モーツァルト、鎮魂ミサK626ホグウッド指揮古楽アカデミー合奏団・・・ 」

 1791.12/5午前零時55分ウィーンにて、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト1756.1/27午前8時ザルツブルグに生まれた作曲家が生涯を閉じている。享年35歳。映画アマデウス冒頭場面はその二日後埋葬シーンから印象的に開始されていた。10月にはクラリネット協奏曲、11月には病床に臥してレクイエム鎮魂ミサ曲はラクリモーサ涙の日の8小節まで完成していて死亡し弟子ジェスマイヤーにより補完された。
 クリストファー・ホグウッド指揮アカデミーオブエイシェントミュージック合奏団、合唱団、Spエンマ・カークビー、Altカロライン・ワトキンソン、Tenアンソニー・ロルフェジョンソン、Basデイヴィド・トーマス、ウエストミンスター児童合唱団デイヴィド・ヒル合唱指揮1983年9月録音ロンドンキングズウエイホール。クリストファー・ホグウッド1941.9/10~2014.9/24は以前、デイヴィド・マンロウ主宰するロンドン古楽コンソートで鍵盤楽器を演奏して設立メンバーで参加していた。ケンブリッジ大学などで古典楽、音楽学を修得している。彼のレパートリーはルネッサンスから現代まで幅広くカヴァーしている。NHK交響楽団のステージには2009年9月に登場したことがある。Vn両翼配置でアルト、チェロ、コントラバスと上手配置型。それはモーツァルトのレクイエム鎮魂ミサ曲でも記録されている。モウンダー版。アカデミーの創立は1973年、ピリオド時代楽器による編成になる。注意すべきは、モダン楽器からピリオド楽器への転換の時に、楽器配置で第一と第二Vnを両翼配置に展開したことは、意外に指摘されていない事実でこのことは、評論家諸氏の責任といえるだろう。
 音楽開始の弦楽合奏からバセットホルン、バスーンによる哀切極まりない旋律は、M氏作曲当時の事情を鮮烈に表現している。男声合唱、永遠に休息を与えよとニ短調で歌い始められ、一段落すると、ソプラノにより神よ憐み給え、キリストよ憐み給えと続く。合唱も管弦楽もそうなのだが、エンマ・カークビーによるノン・ヴィヴラート唱法は力強い確固たる音楽を創造している。格調高い指揮は、抜群の記録レコードとしてその価値は不滅である。第4曲でトロンボーン伴奏、バス独唱は圧巻、目の覚めるような音楽で、M氏面目躍如たる管弦楽法といえる。合唱部分は中央に児童合唱が配置され、女声ソプラノとアルトが前列、テノールとバスが後列、コントラバスの配置からバスは指揮者の右手側に位置している。
 1988年12月、盤友人はハンス・グラーフ指揮モーツァルテウム音楽院管弦楽団の舞台でモツ・レクを合唱団の一員として歌っている。その時合唱団120名は札幌モーツァルテウム合唱団、合唱指揮者は宍戸悟郎。ティンパニー奏者の後ろで演奏したが、彼はエルネスト・アンセルメ風貌然としていた。コントラバスの若い女性奏者は豊かな音量、体全体でスウィングして演奏、彼らは作曲者からの伝統の上で臨んでいたということになる。
 1991年7月21日札幌芸術の森、指揮マイケル・ティルソン・トーマス、Spアーリン・オージェ、Altクリスタ・ルートヴィヒ、Tenポール・スペーリー、Basコーネリアス・ハウプトマンで前年死去したレナード・バーンスタイン追悼演奏会の舞台も経験している。ステージの脇でA・オージェと盤友人はすれ違ったし、C・ルートヴィヒと同じステージに立った経験は、PMFパシフィック・ミュージック・フェスティバルに参加したのおかげである。同年12/9札幌交響楽団331回定期公演にも出演Sp三縄みどりAlt青山智英子Tn五十風修Bs福島明也達と稀少なレクイエム体験であった。その指揮者は秋山和慶、斉藤秀雄メソッドを継承する主要な指揮者で合唱指揮者の宍戸悟郎と絶大な信頼関係のもと、演奏は成功している。
 死者のためのミサ曲レクイエムは、死者に捧げる音楽であるとともに、残された人々の手向けという死者に寄り添う音楽なのであるが、音楽というものは、生きている人間による力強い祈りに他ならない。曲はクムサンクトゥスエイス、レクイエム・エテルナム・ドナ・エイス、冒頭に回帰して永遠の安息を与えよという音楽にて終結する。画家横尾忠則氏は以前ラジオで、この音楽は宇宙全体が鳴り響いているような印象を与えると発信していた・・・・・