千曲万来余話その704「モーツァルト二重奏曲K424アルト奏者今井信子讃・・・」

 LP収集して愉しみの一つとしてその演奏家に「会う」ことにある。ええっカザルスやグリュミオーは既に天上世界の音楽家でだから「それはおかしくないの~」とくるだろう。フィリップス盤でたとえば、コリン・デイヴィス指揮した「イタリアのハロルド」で独奏者は今井信子さん。マーク ルボツキVnとのモーツァルト2重奏曲K423 ト長調、K424 変ロ長調フィリップス録音6514 101盤での豊かなヴァイオリンとアルト(ヴィオラ)の音色を音楽会で体験したいというのは盤友人のささやかな願いである。天上の演奏家にはかなわぬ夢なのだが、今井信子さんや小林道夫さんにJR札幌駅近くの六花亭ふきのとうホールで楽しむことが出来ることは、昨夜小ホール入場券ソールドアウトだったか? ベートーヴェンやバルトーク、モーツァルト作品音楽会は夢の中の時間だった。
 「それは私のお腹に娘がいるときのもの」今井さんは会の後サイン会で懐かしいしあわせの時間を思い口にされたような一言で、ルボツキ1931年レニングラード生れとのモーツァルトLPジャケ写真。モスクワでアブラム・ヤムポリスキやオイストラフに学びチャイコフスキー国際コンペティション1958年で最高位の栄誉を獲得、その後オランダのアムステルダム、ハーグやロッテルダムで活動してフィリップス・レーベルにはシュニトケ、ショスタコーヴィチ作品など録音。なお、その当時ヘルマン・クレバースや今井信子さんとグァルネリ・トリオで活動、この2重奏曲集はミヒャエル・ハイドン作品と収録されている。モーツァルト1783年ザルツブルグで作曲されたものでということは27歳頃作曲のものである。ここで盤友人は今井さんに彼の楽器はグァルネリのように聞こえたのですが?と質問したら「そうではないものね」とかお返事されていました。
 ヴァイオリンのことを調べてみるとクレモナ派ではアンドレア・アマティ1511?~1577という大御所、子息アントニオ1540?~1607、ジローラモ1561~1630、大物ニコロ・アマティ1596~1684というヴァイオリン職人の系譜がある。ジローラモⅡ1649~1740、大物ニコロの弟子に余りに高名なアントニオ・ストラディヴァリ1644-9~1737がいてその子息がフランチェスコ1671~1743、オモボノ1679~1742と続く。ストラディヴァリと同じころのN・アマティの弟子にアンドレアス・グァルネリ1623~1698がいる。この子息にピエトロ・ジョヴァンニ・グァルネリ1655~1720その弟がジョゼッペ・ジョヴァンニ・バッティスタ・グァルネリ1666~1740?その子息にピエトロ1695~1762その弟がジュゼッペ・グァルネリ1698~1744通称グァルネリ・デェル・ジェスという16~18世紀の伊国におけるVnメーカーの系譜でナツメ社田中千香士編著田村正隆2008年発行による。
 そこでルボツキさんの楽器は ?「 ヴァイオリンの名器」 佐々木庸一郎訳のページを眺めていると、ナポリ派アレッサンドロ・ガリアーノ彼は鮮やかな色味の楽器でニコロとゲンナーロという子息たちはストラッド型でもやや黒い色のニスを塗った名器を創作とあった。楽器のヘッドで糸倉の先のスクロールの形はメーカーによる特徴があり本体の色味と顎あての形状からして、盤友人はあのジャケ写真で楽器はガリアーノかなあというのが結論だ。今井信子さんの楽器はアンドレアス・グァルネリ1690年製。
 ふきのとうホールでは下手側客席最前列に座りワクワクして聴いていた。バルトークのヴァイオリン44の2重奏曲BB104ヴァイオリン、ヴィオラ演奏版はお二人とも立奏でした。今井さんの楽器は明らかに床への鳴りが視覚的に聞こえて量感豊か傘寿超えも元気に演奏されるご両人の姿から、今年最高の元気を頂いてLPを持ち音楽会へ足を運ぶという倖せ、何物にも代えがたい無上の感謝をお伝えしたい・・・