千曲盤来余話その59「良い音とは何か?音圧がキーポイント」

オーディオを愛する人は、自分の聴いている音をより良い音に近づけたいという願いを知っている。現在聴いている音よりも、更に良い音で聴きたいという欲求である。
それ以上は求めないと言う人たちも、意識の外に、有ることであるのを知っているのではないだろうか?
それはさておいて、音数おとかずが、一つのピアノの独奏曲では、どうであろうか?
ある人は、ピアニストの息継ぎ、ブレスが聞こえることに驚くことがある。
これは、椅子の軋む音が聞こえたり、録音の最中に鳥の囀りが聞こえたりする、たとえば、バッハの平均律クラヴィーア曲集を弾いたスヴィアトスラフ・リヒテルのレコードを聴くとき気付かされる。
これらは、ピアノ録音そのものより、付随して録音されたモノが聞こえることに対する驚きでもある。
あるとき、リリー・クラウスの弾いたモーツァルトの幻想曲やソナタを聴いたとき、そのピアノの音の余りの豊かさに驚かされる。
左手の音響が豊かなとき、その音は倍音成分が豊富に鳴っている。いわゆる、豊かな余韻である。基音のほかに鳴っている倍音ハーモニックスである。
これらは、音量を必要とせず、音圧が高いときに発生する音響である。
ピアニストは、明らかにその音を鳴らしているし、その音を注意深く聴いている気配を感じさせる。ピアニストはコントロールしている。強弱や、緩急、そしてフレージングといって、音楽の句読点をきっちり表現する歌い方、演奏法。
高音域、低音域のバランスが大事である。低音が豊満だと面白く聞こえるが、実物とは異なる音では、仕方があるまい。中音域の伸びる音の方が、チェックするポイントである。
まず、モノーラル録音のピアノ曲でチューニングすると、スピーカーの鳴り方は、決めやすいと言える。基準が決定されると、ヴァイオリンの音楽も、室内楽も、自ずから方向性が定まると言えるのである。