千曲万来余話その281「内田光子 讃、現代至高のモーツァルティアン!」を掲載。

2016年10月28日、札幌コンサートホールキタラに登場した内田光子、管弦楽は、マーラー室内管弦楽団により、モーツァルトのピアノ協奏曲第17番ト長調25番ハ長調を指揮して、独奏も同時にパフォーマンスした。
ステージ下手側にコンドラバス2、チェロ4その前にヴァイオリン7、反響板を取り除いたピアノを挟んで、上手側アルト5、第二ヴァイオリン7、という普通のオーケストラのおよそ半分のサイズ。 内田がさっと両腕を広げて指揮すると、弦楽器の軟らかな旋律線が歌われ出す。
フルート1、オーボエ2、その後ろにファゴット2、下手側にホルン2、音量は豊かであっても、強い音ではなくホール全体に響くモーツァルトの世界にふさわしい。フルート、キアラ・トレッリという女性奏者、木管楽器で豊か、かつ正確な音程でオーボエ吉井瑞穂とデュエット二重奏がぴたりと決まっている。バスーンのフレデリック・エクダール、スエーデンの音楽性豊かな演奏が愉悦感を充分に表現している。ホルンでホセ・ヴィセント・カステロ・ヴィセードの安定感ある吹奏はこの室内管弦楽団の盤石な音響に貢献している。 「コントラバス首席奏者、ブラク・マラーリ、トルコはよく響き、かつ伸びのある低音域を披露していた。チェロ首席フィリップ・フォン・シュタインエッカー、ドイツは、輝かしい音色を奏でるし顔つきは、ダヴィデ像を彷彿とさせる。
第二ヴァイオリン首席、ソニヤ・シュタルケ、ドイツと対面しているのはコンサート・マスター、イタマール・ゾルマン、イスラエルは、管弦楽のかなめに当たっている。
第二ステージは、バルトーク・ベラ作曲、弦楽のためのディヴェルティメントSz113、立奏によるアンサンブルで、もちろん座っているのは、チェロの四人だけ。彼らの演奏する顔つきは、見物で、顔を見合わせては、笑顔、真剣な表情で速いパッセイジに取り組むとその後は、響きに耳を澄ませて、揺れのない音程の正確な演奏を繰り広げる。アルト首席のジョエル・ハンターの楽しげに演奏する姿は、象徴的である。バルトークの嬉遊曲は、難解な旋律線アレグロ・ノン・トロッポとともに、第二曲緩徐楽章モルト・アダージョのゆったりとした音楽には、癒しがある。終曲では、お仕舞いにピッチカート・ポルカの音楽が姿を見せて、聴いてわくわく、どきどき感は高揚させられて閉じられる。
20分の休憩をはさみ、第25番ハ長調K503。ピアノ、スタインウエイ足下のキャスター、先ほどは、板目にそろえられていて、ここでは、ハの字に角度をつけていた。彼女のペダリング、小刻みに演奏されていて、見ているだけでも、名人芸で、ほれぼれする。カデンツァも長めに披露されて、オーケストラ全員が集中して愉しんでいる。トリルでおしまいが合図され合奏に入るなど、ほぼ完璧な独奏で圧倒的、モーツァルトの微笑み、哀しみ、愉悦感がステージ全体に包まれる。クラリーノ・トランペット二本と、ティンパニー、右手Gソ、左手Cドの乾いた音色が引き締まったバチさばきで披露される。マルティン・ピコッタ、ドイツ。 「デイム・ミツコ・ウチダ彼女、最高のパフォーマンスは、ホールに満たされていた一夜だった。