千曲万来余話その592~「メンデルスゾーン第1ピアノ協奏曲ト短調作品25をゼルキンの名演奏で・・・」

 フェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディ1809.2/3ハンブルク生まれ~ 1847.11/4ライプツィヒ没は裕福な銀行家の家庭に育ったと伝えられている。ピアノ協奏曲第1番は1831年ミュンヘンで作曲、10月に自作自演で発表された。B氏の第5番は1809年作曲でありショパンの第2番は1829年に第1番は1830年ワルシャワで作曲初演されている。メンデルスゾーンはロマン派の旗頭、リストやシューマン、ショパンたちとピアノ音楽の花畑を築いたといえるだろう。
 全3楽章は途切れなく演奏され、ト短調からホ長調そしてト長調へと転調している。中間の緩徐な部分アンダンテのお仕舞いでブラスアンサンブルのファンファーレが聞かれるのは、ショパンの第2番ヘ短調に先例が認められる。
 ルドルフ・ゼルキン1903~1991は、1937年にフィラデルフィア管弦楽団とユージン・オーマンディ指揮の演奏会に初登場、1958年3月メンデルスゾーンの協奏曲を録音している。
 米コロンビア:レコード番号MS6128 
 オーディオ趣味の世界で良い音を求める道は果てしない。それはシグナル信号とノイズ雑音の比率、SN比の向上がアナログからデジタルへという転換をもたらした。そして40年余りの経過で、レコードプレーヤーの再生産開始、レコード針の提供、レコードプレスの再開、アナログ回帰のニュースが続々発信されてきている。ちなみに「札幌音蔵」は、ヴィンテージオーディオ、貴重真空管アンプ、海外スピーカー、プレーヤーの牙城であり中古レコードやヴィンテージもの、国内外のジャズLP、ポピュラー、クラシックなどアナログ世界対応の数少ないショップである。オーディオの工房では、スタッフによるメンテナンス修理のほか、音蔵社長みずから、アンプリファイアの音決めメンテナンス、クリケットレコードでは店長による良質レコードの紹介に余念がない。
 最近、バーチャルアースの採用から、電源タップへと展開し、音量ではなく、レコード再生で音圧の向上を実現している。たとえば、メンデルスゾーンの協奏曲のプレスト、モルトアレグロ、ヴィヴァーチェ~急速に、充分快速で快活にへと移行する部分で、独奏者によるかなり美しい緩徐な独奏部分がある。このときのゼルキンの独奏は、楽器スタインウエイの香り立つような高音を見事に奏でていて、ひときわ印象強い音楽のひと時が記録されている。ゼルキンはスタインウエイ弾きアーティスト。これもシステム性能アップ、良い音を求め続けた成果の表れで、楽器の音色の特色キャラクタが、遺憾なく発揮されたことにより確認された。
 良い音とは、記録されている倍音が鮮やかな音色として再生されるまでアンプの性能を発揮させることにある。ピアノという楽器、グランドピアノ、アップライトピアノ、アナログ世界は楽器の倍音を記録する世界であり、電子ピアノに倍音はまったく無い。グランドピアノを演奏する人にとってアップライトは全く別物であり、楽器として抵抗感を抱く感覚は、楽器を演奏する経験のある人にとって、納得のいく話でなぜ、トランジスタではなく真空管のシステム採用になるのかというと、倍音の印象にあることなのである。
 「倍音」とは油絵でいうと、絵の具の「光沢」にあるのではないだろうか?指揮者オーマンディ1899.11/18ブダペスト生れ~1985.3/12フィラデルフィア没にとってこのレコード録音の半年前には、天才ホルン奏者デニス・ブレインとのラストコンサートがあってデニス・ロスの再起作に当たる。楽曲はM氏がミュンヘン時代、愛弟子女性ピアニストのデルフィーネ・フォン・シャウロートに捧げられていることと関係性はないものの、ゼルキン入魂の演奏は、芸術家の鎮魂の演奏として不滅の音楽であり、その再生の悦びこそ・・・・・