千曲万来余話その593~「スウェーリンク変奏曲「三月かしら?」ピヒト先生演奏で・・・」

  あかつき、あけぼの、朝ぼらけ、それぞれ明け方の大和ことば。夜半から明け方までを暁と呼び、春は曙、秋冬には朝ぼらけと使い分け、5月始めの下弦の月は4日の暁に出る。盤友人は前の夜8時に就寝して翌朝の3時30分頃起床、オーディオルームにあがる。スイッチ・オンした時はまだ闇夜であり、すぐ白み始めて3:50頃からあけぼの、4:18頃から小鳥が囀り始める。札幌は今が桜満開で、山桜は葉も一緒だ。
 オトカズひとつのレコードというと、無伴奏ヴァイオリンソナタ・パルティータや、チェロ組曲とかピアノ奏鳴曲、パイプオルガンなどなど、最近めっきり面白味が増したレコードとしてチェンバロ曲がある。イタリア語名。英語ではハープシコード、独語ではクラヴィツィンベル、フリューゲル。仏語ではクラブサン。ピアノフォルテ(ピアノ)はフェルトのハンマーで弦を打撃する撥音構造であるのに対して、チェンバロは爪プレクトラムが弦をはじく仕組みになっている。アクションの特徴としてジャックと呼ばれる長い木片の先に鳥の羽の軸が爪としてついていて、鍵盤全体で演奏できる。1段から4段の構造まで数種類ある。
 最近は仮想アース、電源タップというアクセサリー周辺機器を装着した上でさらにティファニーレコーズからのカーボンスペーサーAB10を採用、これは制振材料であると同時に、トランスなど磁界発生するコイルのチューニング作用が、微小電流に大きく影響して良い音が獲得される。こうなると、チェンバロの輝かしい音楽が、極上の愉悦を保証してくれることになる。レコードの開始、撥弦による倍音発生、楽器胴体の共鳴音という複合した楽音が再生されることにより、オーディオルームは、奏者直近の王宮広間に変身する。
 ヤン・ピーテルスゾーン・スウェーリンク1562アムステルダム生まれ~1621同地没はバッハ、ヘンデル1685誕生年などバロック音楽以前の大作曲家。ネーデルランド楽派。現在ではフランドル楽派とも呼ばれルネッサンス期から主導する北フランス、ベルギー南部を中心とする音楽を指している。スウェーリンクは、ヴェネツィアに学び、和声論書の翻訳、作曲家、オルガン奏者として終生アムステルダムで活躍していた。後継の作曲家としてフローベルガー1616~1667、ブクステフーデ1637~1707、ヨハン・フェルディナント・カスパール・フィッシャー1670~1748、ヨハン・クーナウ1660~1722などの名前が挙げられる。
 仏エラート盤STU70348で演奏者は、エディト・ピヒト=アクセンフェルト1914.1/1フライブルク生れ~2001.9/29同地没。ルガーノでアンナ・ヒルツェル=ランゲンハン、バーゼルでルドルフ・ゼルキンにそれぞれ師事している。1927年生地デビュー、1937年ショパン国際コンクールで入賞、47~78年フライブルク音楽院教授就任、81~96年には草津国際音楽祭アカデミー講師としてたびたび来日、札幌でも大谷短期大学でピアノ公開レッスンを開催、共済ホールにてバッハのゴールトベルク変奏曲演奏会、盤友人は故高岡立子さん(教授)からご案内頂きベートーヴェンのソナタのレッスン参観と演奏会では最前中央席で鑑賞する機会があった。ソナタ(28番?)では古典派的解釈とロマン派的アプローチの相違について詳細な説明を女学生に教授していたのが印象的だった。バッハの「ゴールトベルク」では暗譜演奏であり、開始から5曲目あたりで危うい一瞬が有り、だがしかし、ミスタッチにはならず、その後は一気呵成で前半を終了し、少し間をおいてフランス風序曲第16曲から安定した音楽を展開、確信に満ちた演奏で百戦錬磨、ヴェテランの至芸を札幌の市民300人余りの聴衆に印象づけさせていた。今から30年余り以前の記憶である。
 午前4~5時の間の鑑賞は音量を押さえ再生の基準を音圧で決めて、クリーンな電源に感動で、ひときわ深い味わいが・・・