千曲万来余話その603~「べー君、7重奏曲変ホ長調、ウィーンの香りと酸味・・・」

 七月というと最近は毎年のように豪雨災害が続いている。昔は梅雨前線停滞で大雨、今は線状降水帯が集中豪雨をもたらす。7/3熱海伊豆山地区で土石流災害が発生、被災された方々にはお見舞い申し上げます。神話に出てくる八岐大蛇さながらのニュース映像を目にして、改めて災害の惨状に恐怖を覚える。復旧にあたる皆さんに、二次災害が起こらないことを祈るばかり。
 7月7日は七夕、これは本来太陰暦による。北海道では月遅れの七夕で8月7日、正確には旧暦の7月7日だから今年は8月14日にあたる。東南の夜空に牽牛、彦星わし座のアルタイルと天頂に織女星、琴座のベガは輝く。その北側には白鳥座のデネブで夏の大三角形を形作る。八月の星空が本来の七夕伝説になる。
 ベートーヴェン1770~1827は作品番号設定の前に習作が多数あり、作品1は1795年楽譜出版のピアノ三重奏曲3曲である。1794年末には草稿初演、ハイドンが同席しリヒノフスキー候御前演奏であった。1790~91年には作品番号無WoO38のピアノ三重奏曲が作曲されていた。その後ピアノソナタ、弦楽四重奏そして1800年ウィーンにて7重奏曲変ホ長調作品20が発表される。当時のウィーンは、フランス革命の影響下、B氏の創作意欲は市民階級の興隆と並行関係にあったといえる。たとえば1793年ルイ16世処刑のニュースを青年ベートーヴェンはどのように耳にしていたか? 作品番号を決意したのはその翌年になる。
 7重奏曲はVn、ヴィオラ=アルト、チェロ、コントラバス、クラリネット、ファゴット、ホルンという楽器編成。これは明らかに交響曲発表する前の作曲になる。キングレコードは超重量レコード180g特別高品質材料使用、THEスーパーアナログディスクを1992.12/10\3,800-でリリース。ウィーン8重奏団員による演奏で1959年3月ゾフィーエンザール録音エンジニアはジェイムズ・ブラウンでプロデューサーはエリック・スミスというクレジット。ウィリー・ボスコフスキーVn、ギュンター・ブライテンバッハVla、ニコラウス・ヒューブナーVc、ヨハン・クルンプCb、アルフレッド・ボスコフスキーCl、ルドルフ・ハンツェルFg、ヨゼフ・ヴェレバHrという編成。今から60年余り前の録音でも、その新鮮さは、画期的である。低音域の量感はこのレコードならではの手応えで、オーディオ再生の醍醐味といえる。音の切れ味は、ウィーンの音楽に相応しく、その甘みと酸味は彼らの演奏の音楽性による。何より、規格が四角四面ではなくて、ウィーンの風を思わせる躍動感をもたらしている。
 ステレオ録音はA、Bという2つのチャンネルと中央の定位という感覚を実現する。だからここでは、左チャンネルにヴァイオリン、右チャンネルにコントラバス、中央にはクラリネットやファゴットという楽器配置になる。翻って、作曲家のイメージというか、コンセプトはいかなる楽器配置を想定しているか、思案することは定位というローカリゼイションを考えた時、一人の聴衆としての楽しみである。盤友人は、弦楽三重奏曲を再生して、中央にチェロ、左右にVnとVlaという配置をイメージする。ということは下手側にコントラバス、上手側にホルンという想定で、中央にファゴットとクラリネットをイメージする。
 ステレオ録音の定石として左右に高低音を展開して配置するものであるのだが、これを覆す歴史が、ヴァイオリン両翼配置である。コントラバス、Vnとチェロを左スピーカーに配置して、右スピーカー側にVla、クラリネット、ホルンの配置、おそらく、べー君はこの配置を想定していたであろうことを確信する。これからの時代は、旧来のステレオ録音の上をいく新しい配置を演奏家に期待するところは大であり、ウィーンの風を大いに吹かせてもらいたい・・・